仙台に足りないのは、会社ではない。意思決定者ではないか。
仙台は支店経済都市だと仙台市自身が認識している。若者は就職を機に東京圏へ流れ、本社機能の誘致も進めている。僕が感じている「この街には意思決定の手触りが弱い」という違和感を、データと現場感覚から考える。

仙台で会社をつくり、地域の経営者と話し、営業をしていると、ときどき強い違和感がある。
会社はある。
人もいる。
東北最大の都市でもある。
それなのに、「ここで決まっている」という感覚が弱い。
大きな予算。
新規事業。
投資。
採用。
広告。
IT。
ブランド。
何かを前に進めようとすると、最終的な意思決定が仙台の外にある場面にぶつかる。
もちろん、これは僕個人の観察だ。
だから最初に仮説として書く。
仙台に本当に足りないのは、会社の数ではなく、意思決定者の数ではないか。
仙台市自身が「支店経済都市」と書いている
これは僕だけの印象ではない。
仙台市が2024年に策定した「仙台経済COMPASS」でも、仙台は東北の拠点都市として多くの民間企業の支社・支店が進出する**「支店経済都市」**と説明されている。
市の資料は、支店経済について二つの側面を書いている。
一つは、地元中小企業との取引、新たな雇用、多様な人材の転入・転出といったプラス面。
もう一つは、市内事業所で生まれた所得が、本社などのある市外へ流出する側面だ。
僕が気になるのは後者だ。
仙台支店に100人が働いていることと、仙台に100人規模の本社があることは、同じではない。
支店には雇用がある。
地元企業への発注もある。
それは間違いなく価値だ。
でも、会社全体の資本配分、新規事業、M&A、大規模採用、研究開発、ブランド、海外展開といった意思決定が東京本社にあるなら、
仙台には「仕事」はあっても、「決める権限」は残らない。
この差は大きいと思っている。
本社があるということは、意思決定があるということだ
本社という建物そのものに価値があるわけではない。
僕が欲しいのは、本社機能だ。
企画する人。
投資を決める人。
採用戦略を決める人。
新しい商品を決める人。
海外へ出るかを決める人。
研究開発に何億円使うかを決める人。
会社を買うか、売るかを決める人。
これらの人間が同じ都市にいることには意味がある。
意思決定者の周りには、専門家が必要になる。
弁護士。
会計士。
金融。
広告。
デザイン。
IT。
コンサルティング。
採用。
不動産。
そして次の起業家。
一つの大きな意思決定機能があるだけで、その周囲に高付加価値な仕事が生まれる。
僕はこれを、単なる「雇用者数」の話ではなく、
都市が自分で未来を決められるかという話
として見ている。
仙台市も、本社機能を呼ぼうとしている
興味深いのは、行政自身も本社機能を増やそうとしていることだ。
2026年度の仙台市の企業立地制度では、本店・本社機能の移転・拡充を対象に、建物取得型では最大10億円の助成が示されている。
対象も単なる事務所ではない。
調査・企画。
研究開発。
国際事業。
情報処理。
情報サービス。
管理業務。
つまり、まさに企業の中枢機能だ。
これは裏返せば、
「仙台には、そうした機能をもっと置く必要がある」
と行政自身も考えているということだと思う。
支店経済を全面的に否定する必要はない。
支店は東北市場への入口になる。
大企業の人材も入ってくる。
でも、支店経済を最終形にしてはいけない。
支店を集める都市から、本社を生む都市へ。
僕はそこまで行ってほしい。
若者が流出するのは、「住みやすさ」だけでは止められない
仙台はよく「住みやすい」と言われる。
緑がある。
都市機能がコンパクトだ。
東京より家賃も抑えやすい。
僕も、その良さ自体を否定するつもりはない。
でも、若い人が都市を選ぶ理由は住みやすさだけではない。
何の仕事があるか。
誰と働けるか。
どれだけ成長できるか。
いくら稼げるか。
面白い人に会えるか。
世界とつながれるか。
自分が意思決定できる立場へ行けるか。
仙台市自身、若者が就職を機に東京圏などへ転出することを課題にしている。
さらに2026年の市の資料では、20〜24歳について、2022年から2025年まで毎年1,500〜2,000人以上が東京圏へ転出超過しているとしている。
これは「東京が悪い」という話ではない。
東京には仕事がある。
本社がある。
投資家がいる。
意思決定者がいる。
世界企業との接点がある。
若者がそこへ行くことには、本人から見れば合理性がある。
だから「若者に仙台に残ってほしい」と言うだけでは足りない。
残りたいと思うほど面白い仕事と意思決定権を、仙台につくるしかない。
会社の数を増やすだけでも足りない
仙台経済COMPASSでは、2022年度の法人数が35,709法人、2030年に向けた目標が37,000法人とされている。
会社が増えること自体は良い。
でも、僕は数だけでは都市の強さを測れないと思っている。
1人会社が1,000社増える。
地域内の需要だけを取り合う会社が1,000社増える。
それと、
世界へソフトウェアを売る企業が10社生まれる。
全国から売上を取るメーカーが10社生まれる。
海外から資本を集める会社が10社生まれる。
では、都市への効果が違う。
重要なのは、
域外から金を稼ぎ、その利益をこの街で次の投資へ回す企業が増えること。
だと思う。
仙台市もCOMPASSで「新たな市場への挑戦」や「外貨獲得」を掲げている。
海外販路開拓に取り組む企業割合は2022年度で6.0%、目標は10%以上。
事業拡大に取り組む予定がある企業割合も2023年度で23.8%、目標は30%以上とされている。
つまり行政の資料を読んでも、
現状維持では足りない
という問題意識自体は共有されている。
僕が感じる「意思決定の手触りの弱さ」
ここから先はデータではなく、僕自身の感覚だ。
仙台で営業をしていると、決裁者へたどり着くまでが遠い企業がある。
担当者はいる。
支店長もいる。
話も聞いてくれる。
でも、最後に大きな決定をするのは別の都市だ。
一方、地場企業では社長がすぐ目の前にいることも多い。
これは仙台の強みだと思う。
ただし、地場企業側に成長投資の意思がなければ、決裁者が近くても予算そのものが生まれない。
だから仙台には二つの課題があるように感じている。
外資・大企業の支店では、決裁権が遠い。
地場企業では、決裁権は近いが、成長投資が小さい場合がある。
もちろん、すべての企業がそうではない。
世界へ挑戦している仙台企業もある。
新規事業をつくる経営者もいる。
だからこそ、そういう企業がもっと増えたら面白いと思う。
「支店経済」を利用して、その先へ行く
僕は支店経済を全部壊せと言いたいわけではない。
むしろ使えばいい。
東京本社の大企業が東北拠点を仙台に置く。
人材が来る。
顧客が集まる。
商流が集まる。
情報が集まる。
そこまでは仙台の強みだ。
問題は、
そこから何を生むか。
支店で経験した人が仙台で起業する。
地場企業が大企業と取引して成長する。
仙台の会社が東京本社へ商品を売る。
仙台で生まれた技術が全国へ出る。
全国で稼いだ利益が仙台へ戻り、次の会社へ投資される。
そこまで循環したとき、支店経済は「弱み」だけではなく、次の本社経済をつくるための入口になる。
仙台に必要なのは、意思決定の密度だ
僕が欲しいのは、会社の看板が増えることではない。
意思決定の密度が高い街だ。
今日、10億円の投資を決める人がいる。
明日、新会社をつくる人がいる。
来月、海外進出を決める人がいる。
新しいプロダクトをつくる人がいる。
会社を売却した人が、次の会社へ投資する。
学生がその人たちを見て、自分もやろうと思う。
優秀な人が「東京へ行かなくても、ここで世界を目指せる」と思える。
そうなれば、仙台は単に「住みやすい街」ではなくなる。
自分で未来をつくれる都市になる。
僕自身も、その一社をつくる側に回る
ここまで書いておいて、自分は評論家でいたいわけではない。
仙台に本社企業が足りないと思うなら、自分でつくればいい。
世界から売上を取る会社が少ないと思うなら、自分で取ればいい。
意思決定者が少ないと思うなら、自分が意思決定者になればいい。
僕はSGPを、仙台の中だけで完結する会社にするつもりはない。
全国へ売る。
海外へ売る。
技術をつくる。
人を雇う。
投資する。
いつか僕がいなくなっても、次の意思決定者が育つ会社にする。
仙台を批判するだけなら簡単だ。
僕が本当にやるべきなのは、
自分が欲しいと思う都市の構成要素を、一つずつ自分でつくることだ。
仙台に足りないのは、会社ではない。
意思決定者ではないか。
いまの僕は、そう考えている。
そして、その仮説が正しいのかどうかを、
自分の会社と、この街で試していきたい。